株式会社西鉄ストアは、一般社団法人リテールAI研究会の研究活動として、福岡大学と共同で食品スーパーにおけるPOSデータのAI解析によるインバウンド需要の可視化および販売促進に取り組み、購買380%増加の成果を得たと発表しました。
本取り組みは、西鉄ストアが加盟するリテールAI研究会内の活動の一環です。同社は福岡大学商学部商学科 太宰潮研究室と協力してPOSデータをAIで解析し、これまで認識できていなかった海外旅行客の国籍や購買ニーズを探り、店舗施策に活用しました。

福岡市は外国人観光客が多く、インバウンド購買の数と金額が急増しています。地域経済においても重要性が増しており、スーパーマーケットでもインバウンド購買の成長が売上増加に大きく影響していました。
旅行客は継続してスーパーを利用しないため、ポイントカードを発行しません。そのため顧客情報に紐づく購買情報(ID-POSデータ)が取得できず、外国人観光客の購買分析と購買傾向の把握が困難でした。インバウンド購買に対応した計画的な販売はできず、欠品や機会ロスへの対応が課題となっています。
本研究では、店舗スタッフにヒアリングした外国人観光客に人気の商品群の特徴をAIで解析し、購買データ上の商品特徴を解析して類似度を計算。この類似度を「インバウンドスコア」として各購買データに付与しました。免税カウンターにおける免税受付時のレシートデータを紐づけることで、購買データに国籍情報を付与しました。
さらに「インバウンドスコア」の高い購買の類似性をAIで解析することで、海外旅行客に人気の商品と国籍を特定。韓国旅行客は高額なお酒と一緒に手軽なデザート類、中国、台湾、タイの観光客はお土産菓子、シンガポールの旅行客はいずれも購入していることが判明しました。また、ペットフードにも購買の見込みがあることが示唆されました。

解析結果をもとに2025年4月14日から、「ららぽーとレガネット福岡」にて観光客向けの売場を展開し、需要が見込まれたお菓子・ペットフード・ラーメン・味噌を対象として英語と韓国語でお土産用として推奨するPOPを用意しました。
海外旅行客の購買と推測されるデータを施策の実施前後1ヶ月で比較したところ、英語と韓国語のPOPをつけた商品の購買数が380%伸長していました。中でもペットフードは800%と伸長率が高く、隠れた需要の掘り起こしに成功したといえます。
リテールAI研究会では、加盟会員社が特定のテーマに沿ってAI実用化実験等、様々な研究活動を実施しています。本取り組みはデータによる小売業の課題解決を目的に、会員社である西鉄ストアと、福岡大学との共同研究として2025年2月に開始しました。
今回の成果は、小売業界におけるAI活用の新たな可能性を示すものです。特に地方都市でのインバウンド需要の取り込みにおいて、データ分析による科学的なアプローチが有効であることが実証されました。今後、他の地域や業態への展開が期待されます。