株式会社博報堂のEC領域特化組織「HAKUHODO EC+」と博報堂買物研究所は、オンラインとオフラインを行き来する購買行動の利用実態・意識を聴取した「ECと実店舗のハイブリッド消費者調査」を実施しました。
調査の結果、生活者の半数が「ハイブリッド消費者」に該当する一方で、オンラインとオフラインを横断する際の体験には多くの不満があることが明らかになりました。
ハイブリッド消費者がEC市場の主要層に
「ECと実店舗で月1回以上の頻度で買物をした、かつ、ECと実店舗で一年以内に同じカテゴリーの買物をした生活者」と定義したハイブリッド消費者は、男女20~69歳全体の52.3%を占めました。
また、ハイブリッド消費者による購入金額が、全体のECでの日用品購入金額のうち81.8%を占めており、EC市場の主要層と位置付けられます。
連携不足への根強い不満が浮き彫りに
ECと実店舗を横断した体験に不満を感じることがあるハイブリッド消費者は50.2%に上りました。特に女性40代・60代に不満が集中しています。
ハイブリッド消費者で特に多かった不満は「欠品商品の入荷情報が不明(54.4%)」「ポイントがEC/実店舗で非連携(52.5%)」「ECと実店舗の価格差(50.6%)」など、OMO・オムニチャネルに関する体験でした。
OMOからユニファイドコマースへの期待
ハイブリッド消費者が求めているのは、「店舗受取/配送など受取方法を選べる(69.7%)」「欠品商品の入荷通知(67.4%)」「ECと実店舗のポイント連携(67.3%)」といったOMO・オムニチャネルレベルの体験の実現です。
一方、「特定流通のハイブリッド消費者」は、さらに先のユニファイドコマース体験に期待しています。「ECサイトでのお試し予約」のようなOMO体験だけでなく、「パーソナライズされた提案」や「ECと実店舗での商談内容の情報連携」など、ECと実店舗が完全に統合された体験への需要が存在します。
今後の展望
今回の調査から、現代の消費者の購買行動と、それに対する企業の提供価値の間に存在する「理想と現実のギャップ」が浮き彫りになりました。
企業はまず、「繋がらない体験」への不満を解消するために、チャネル間の情報連携といったオムニチャネルやOMOレベルの基本的な体験を確実に提供することが不可欠であると考察されます。
さらに、「特定流通のハイブリッド消費者」は、一歩先の体験を求め始めています。彼らが期待するのは、あらゆる顧客接点の情報が統合され、自分に最適化されたユニファイドコマースレベルの高度な体験です。
今後、生成AIやAIエージェントの社会実装が進むにつれて、顧客一人ひとりに寄り添うパーソナライズされた体験への期待は、一部の先進的な層から、やがて全体の当たり前のニーズへと変化していくと考えられます。
小売業界においては、顧客の基本的な期待に応えつつ、次世代の購買体験の提供に向けた投資を検討していくことが、今後の成長の鍵になると考えられます。