Stripeは、全国の小売業・飲食業・サービス業事業者を対象に、多様化する決済システムとデータ活用に関する調査を実施しました。京都大学公共政策大学院の岩下直行教授の協力も得て、事業者が直面する課題の実態が明らかになりました。
調査の結果、約半数の事業者が店舗・ECともに複数種類の決済システムを導入していることが判明。特に従業員51人以上の事業者では、平均3種類の決済システムを導入しており、顧客の多様なニーズに応えるため複数の決済手段を備えることが不可欠となっています。
一方で、インバウンドによる購買や越境ビジネスが増加している中、海外の決済手段に対応しているのは約3割にとどまり、訪日外国人や越境ニーズへの対応が十分でない現状も浮き彫りになりました。
顧客の多様なニーズに応えるため複数の決済システムを導入する事業者が多い一方で、約8割の事業者が何かしらの「決済の裏コスト」を感じていることが明らかになりました。特に「決済システムごとのセキュリティ対策に手間がかかる」(42.5%)、「決済システムごとの導入・維持にリソースがかかる」(48.7%)と回答する事業者が約半数存在しました。

複数の決済システムにまたがるデータの管理についても課題が浮上しています。データの一元管理ができていないと回答した企業は51%と半数以上に上り、実際にデータを活用できているかという質問に対しては、約7割の事業者が「できているとは言えない」と回答しました。
その理由として「データを分析・活用する人員・時間が不足している」や「決済システムごとのデータ統合が煩雑」などが多く挙げられ、リソース面でのさらなる強化が求められていることが明らかになりました。
決済データの効果的な管理と活用により実現可能な顧客体験・店舗経営への対応について質問したところ、1番多かった回答は「顧客一人一人に合わせた、パーソナライズされたサービスの提案・提供」(21.2%)という結果になりました。顧客体験の高度化やリピーター創出に直結する施策への関心が高く、効率的なデータ活用の成否が企業の競争力を左右することが伺えます。

今年3月末までに不正利用対策の一環として3Dセキュアの導入が必須化されました。調査の結果、約3割の事業者が「不正利用防止の効果を実感している」と回答する一方で、同率の約3割が「導入や運用に伴う手間やコストの負担」を感じていることが判明しました。また、25%以上の企業がまだ導入していないと回答しています。
岩下教授は今回の調査結果について、「決済手段の多様化は、消費者の利便性を高める一方で、加盟店の運営やセキュリティ対応に新たな負担をもたらしています。こうした現場の実態を定量的に把握することは、健全なキャッシュレス社会を築くうえで欠かせません」とコメントしています。