株式会社ファミリーマートは、AIを活用した発注システム「AIレコメンド発注」を2025年6月末から全国500店舗に導入し、運用を開始しました。本システムは、膨大なデータを分析・学習することで、各店舗におむすびや弁当、サンドイッチなどの最適な発注数を自動で推奨するものです。
これまで店舗の発注業務は、各店舗の実績や経験に基づいて実施される傾向があり、商品の欠品による販売機会ロスや廃棄ロスの発生が課題となっていました。AI技術を活用したより精度の高い発注を実現することで、店舗運営の最適化を目指しています。
「AIレコメンド発注」の主な特長として、高精度な販売予測が挙げられます。AIが過去1年間の販売実績、店舗周辺の通行量(時間帯別、性別、年代別)、気象データ(気温、湿度、降水量、日照量など)、カレンダー情報(祝日など)といった多岐にわたる膨大なデータを分析・学習し、日別・便別・単品別に最適な販売予測数を算出します。これにより、発注担当者の経験では予測することができない変化も捉え、高精度な推奨値を提供します。
また、品揃えの最適化に向けて、自店舗と立地環境が同様でかつ利益額が高い店舗を「お手本店」として販売実績を参照し、自店にない売れ筋商品など、これまで発注されていなかった商品を推奨することで、店舗の品揃え改善を提案します。
売場ボリュームの自動調整とフードロス対策については、販売予測数に加え、販売機会ロスを防ぐために、次の納品までの在庫の繰り越し分を考慮した「売場ボリュームを保つ数」を自動で算出・加算。適切な商品陳列量を維持し、販売機会の最大化を図ります。これまで過剰発注により発生していた廃棄ロスを適正化し、フードロス対策にも繋げます。
業務効率化の面では、AIが推奨値を自動で算出することで、発注業務にかかる時間を1週間あたり約6時間削減し、発注担当者の負担を軽減します。AI推奨値は1日4回更新され、店舗の状況に合わせて手動での調整も可能です。特に新商品や販促商品、イレギュラーなイベントなど、AIが考慮できない要素に対しては、店舗の判断による調整を推奨しています。
ファミリーマートは、今回導入した500店舗の売上や店舗収益への効果を踏まえ、導入範囲の拡大を目指します。より良い品揃えとサービスの提供、フードロス対策を推進するとともに、店舗の業務効率化を図っていく考えです。
コンビニエンスストアでは、人手不足や環境問題への対応が急務となっており、AI技術の活用による業務効率化とサステナビリティの両立が重要な課題となっています。今回のファミリーマートの取り組みは、AIによる業務改善の先進事例として注目されるでしょう。