カゴメ株式会社をはじめとする6者によるコンソーシアムが、生鮮トマトの品質不良による廃棄ロス低減を目指す共同研究を開始しました。本取り組みは、農業・食品産業技術総合研究機構の公募事業「戦略的スマート農業技術等の開発・改良」に採択されています。
共同研究には、カゴメのほか、シブヤ精機株式会社、農研機構、株式会社AGRI SMILE、京都大学、いわき小名浜菜園株式会社の6者が参加しています。それぞれの専門性を活かし、AIを活用した選果システムの開発から、データ解析、栽培技術の改良、流通システムの最適化まで、一貫した取り組みを行います。
研究の第一段階として、AI選果機を共同開発し、2024年4月より福島県のいわき小名浜菜園のトマト集荷場に実装しました。このAI選果機は、トマト果実の外部・内部品質を非破壊で検査し、20項目のデータを収集します。2024年9月時点で400万点を超えるデータが蓄積されています。
AI選果機は、コンベア上に配置されたカメラやセンサーを用いて、カゴメブランドの「ラウンドレッド®」や「高リコピントマト」といった中玉トマトの品質情報を瞬時に検出します。これにより、人の目では判別が難しい「潜在的な品質不良」の検出が可能となりました。
2025年4月からは研究の次の段階として、AI選果機で得られたデータを既存の栽培・流通データと双方向に連携させ、潜在的な品質不良を防ぐ栽培技術と流通システムの構築を目指します。まず、選果データと栽培データの連携により、不良果発生率を減らす栽培技術の開発に取り組みます。
さらに、選果データと流通データを連携させ、品質不良の発生予測モデルを開発。品質に合わせて配送方法を工夫するなど、計画的・効率的な流通システムを構築し、実証を行う予定です。
農産物の廃棄ロスは深刻な問題であり、特に収穫時には正常品として出荷されたにもかかわらず、流通過程で品質が劣化し、消費者の手元に届く前に廃棄せざるを得ないケースが課題となっています。本研究では、AIとビッグデータを活用することで、廃棄ロス問題の解決を目指します。
本実証が成功すれば、生鮮トマトの品質管理が大幅に向上し、廃棄ロスの低減につながるでしょう。さらに、技術を他の農産物にも応用できた場合、日本の農業や食品流通全体の効率化と持続可能性の向上に貢献する可能性があります。6者の取り組みが食品ロスという社会課題の解決にどのように貢献するか、今後の研究成果が待たれます。
