株式会社コパ・コーポレーションと株式会社Sapeetは、実演販売で培われた話術をAIで再現する「実演トークスクリプト自動生成システム」を共同で開発しました。
本システムは、コパ・コーポレーションが30年以上にわたり現場で蓄積した実演ノウハウと、同社代表取締役社長の吉村泰助氏が著書『アキバ発! 売(バイ)の極意』の中で言語化した5つの販売メソッドを生成AIに組み込んだものです。商品名やカテゴリ、価格などの基本情報と商品パッケージ画像を入力するだけで、説得力のある実演口上が即座に生成されます。
生成されるトークには、導入、課題提起、ストーリーテリング、行動喚起といった構成要素が網羅されており、一貫性のある説得力の高いスクリプトが完成します。

コパ・コーポレーションでは、実演販売士それぞれの経験や勘をもとに数々のヒット商品を生み出してきました。しかし、技術や話術の再現や継承は容易ではなく、新人販売員の育成には相応の準備期間が必要でした。
一方、Sapeetは経験豊富なベテランの知見を生成AIに実装し、再現可能な形で業務に活かす「Expert AI」領域を専門する東京大学発のベンチャー企業です。人の勘や暗黙知を構造化することにより属人化を解消し、誰もが高いパフォーマンスを発揮できる環境を構築します。
今回の協業では、コパ・コーポレーションの販売理論とデータを、SapeetのExpert AIモジュールに最適化して組み込むことで、熟練実演販売士のトークを誰でも再現できるシステムを実現しました。開発段階では、吉村氏がプロンプトエンジニアリングに携わり、実演販売の要点をAIが再現可能な形式で言語化しています。
販売の現場では、本システムの導入により、新人の研修にかかる時間や講師の工数を抑えられるため、育成コストの削減効果が期待されます。また、口上作成の効率化により、準備にかかる時間は最大80%削減(同社検証値)されるため、販売現場の負担軽減も見込まれます。
さらに、熟練実演販売士の知見を「トークの型」として共有できるようになることで、個々の経験やスキルに依存せず一定品質のトークが可能になり、購買率向上やPDCAサイクルの高速化につながります。対面販売のほか、ライブコマースやSNS向け短尺動画など多チャネルへの展開も可能です。
コパ・コーポレーションは2025年度内に同システムの活用範囲を拡大し、EC動画用テンプレートなどのサービス化や、AI音声合成・動画生成技術を活用したAIアバターによる実演販売も構想しています。今回のAIシステム導入により、小売業界における実演販売の新たな可能性が広がることが期待されます。社内の熟練人材が持つノウハウをAIを活用して継承するスタイルは、今後も広がっていきそうです。