帝国データバンク(以下、TDB)が、2024年10月の景気動向を調査した結果を発表しました。調査によると、全国2万7,008社を対象とした景気DI(ディフュージョン・インデックス)は44.3と9月比で0.3ポイント減少し、4ヶ月ぶりに悪化に転じています。
TDBは、景気DI悪化の主な要因は、個人消費の停滞にあると分析しています。節約志向の高まりや、長引く残暑による秋冬物の出足の鈍さが影響し、小売業やサービス業で顕著な落ち込みが見られました。

業界別では、10業界中6業界で悪化が確認されています。特に「小売」は1年8ヶ月ぶりに30台に低下しました。飲食料品やアパレルなどを中心に個人消費が停滞し、売上の減少が報告されています。
小売分野別に見ても9月と比べて低下が目立ち、「飲食料品小売」が3.3ポイント減で2ヶ月連続、総合スーパーなどを含む「各種商品小売」が1.7ポイント減で3ヶ月連続、「繊維・繊維製品・服飾品小売」が2.4ポイント減で2ヶ月連続となっています。「自動車・同部品小売」は、3.4ポイント増で4ヶ月ぶりに上昇しました。

地域別では、10地域中8地域で悪化が見られました。都道府県別では27都道府県が悪化しており、観光需要の伸び悩みに加え、季節需要や一部地域における公共工事の低迷が要因と見られます。

規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」がそろって半年ぶりに低下。特に中小企業や小規模企業の飲食料品関連は、製造・卸売・小売・飲食店ともに落ち込みが目立ちました。
TDBは、個人消費の動向が今後の景気を左右し、実質賃金の継続的な上昇が鍵となると推測しています。10月からの最低賃金の引き上げにより、景気回復への期待がある反面、企業にとっては経費増につながり利益を圧迫しているといった意見も多く聞かれます。
同社の調査によると、採用時の最低時給は平均1,167円と、2024年改定の最低賃金を112円上回っていますが、人手不足企業ではさらに高い1,174円に設定しているケースもありました。

景気の先行きは不透明感が強いものの、観光産業の回復や人手不足に対応する設備投資の実行、リスキリングの浸透、生成AIの普及、半導体の需要拡大などがプラス材料となり得ると分析。一方で、物流コストの上昇やインフレの進行、中東情勢などはマイナス要因だとして懸念を示しています。
調査結果を踏まえ、TDBは今後の景気について、下振れ懸念を抱えつつも底堅く推移していくと予想しました。企業は、動向を注視しながら、適切な対応策を講じていく必要があるでしょう。
