帝国データバンクは、2025年夏の記録的な猛暑が東京都の家計消費支出に与える影響を分析した結果を発表しました。
調査結果
調査の結果、平均最高気温が平年通りだった場合と比べて、東京の家計消費支出は約772億2,300万円増加する可能性があることが分かりました。
気象庁によると、2025年7月の東京都の最高気温は平年33.2℃で、平年値を3.3℃上回りました。8月も同33.9℃と見込まれ、平年より2.6℃高い状況です。東京では6月の真夏日が13日となって観測以来の最多を更新し、7月と8月の猛暑日が合計20日に達するなど、2025年の夏は記録的な暑さとなっています。

支出が増加した項目を見ていくと、「食料」では弁当など火を使わない調理食品が増加していました。飲料は総じて大幅に増加し、炭酸飲料が約17億円増、茶飲料が約15億円増、チューハイ・カクテルが約10億円増、発泡酒等・ビールがいずれも約9億円増となっています。菓子類ではアイスクリーム・シャーベットが大幅に伸長。外食では喫茶代などが増加し、「食料」全体で約192億2,800万円の増加となりました。

「家具・家事用品」ではエアコンなど冷房器具への支出が増え、「住居」では設備補修費が増加要因となりました。また「教養娯楽」は宿泊料やパック旅行費を中心に約197億1,500万円増加、「保健医療」は熱中症対策など医療サービスを中心に支出が増加したとみられます。
一方、減少した項目には、気温上昇による漁獲量の減少で価格の上昇を受けた魚介類や生育不足が表れた生鮮野菜が挙げられます。調理場でのガス使用の抑制により、ガス代も大きく減少しました。猛暑による外出機会の減少などの要因から、女性用のシャツ・セーター類や和服などを含む被服への支出が減少しました。
世帯当たりの支出額では、7月に2,687円、8月に4,337円の増加が見込まれ、2025年夏は猛暑により月平均3,512円の支出増と試算されます。東京都は都民がエアコン等の利用を控えないよう水道料金の基本料金を無償化するなど、物価上昇が続く中で猛暑対策を進めましたが、実質賃金の低迷は家計の購買力をそぎ、節約志向を強める要因となりました。賃上げやボーナス増加の動きは、個人消費の押し上げ要因となると見られます。

気象庁の予報によると、気温は9月以降も高めで推移する見通しです。猛暑により増加した支出は家計の中である程度調整される可能性があります。また、2025年の飲食料品の値上げは2万品目に迫る見込みです。帝国データバンクは、家計の購買行動の変化が、企業の売り上げにどのような影響を与えることになるか、今後も注視していく必要があるという見解を示しています。