KPMGジャパンは、国内小売業における顧客体験価値を向上させるテクノロジーに関する調査を実施し、結果の一部を公開しました。本調査は、企業と消費者の間での技術活用のギャップを明らかにし、今後の小売業の方向性を考察するものです。
今回の調査は、実店舗の利便性向上やオムニチャネルショッピング、ハイパーパーソナライゼーションなど、6種のテクノロジーについて、消費者4,000名と企業104社を対象に実施されました。
まず、実店舗における購買の利便性を高めるテクノロジーについてです。セルフレジやセルフスキャンなどのセルフ化技術は、企業の導入率が35%に対し、消費者の活用率は53%と高く、消費者が積極的に利用していることがわかりました。無人店舗やウォークスルー店舗の導入は1割未満ですが、3割程度の企業が将来的に検討する意向を示しました。しかし、初期費用の高さが導入の障壁となっており、採算性の検証が求められています。
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次に、オムニチャネルショッピングに関連するOMOロイヤルティプログラムについてです。企業の導入率は34%ですが、消費者の活用率は19%に留まっています。これは、ロイヤルティプログラムがコモディティ化して差別化が困難となり、消費者が単純なポイント付与以上の価値を求めていることが原因と考えられます。今後は、ブランドコンセプトに基づいた活動や金銭以外のインセンティブを検討する必要があります。
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また、ハイパーパーソナライゼーションについては、企業の63%がパーソナライズド広告に取り組んでいますが、53%の消費者が監視されているような嫌悪感や精度への不満といったマイナスイメージを抱いています。プライバシー保護の観点からの配慮が求められ、ユーザーの購買履歴や同じ商品を購入したセグメントの情報とAIを活用するなど、自然な広告展開が期待されています。
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今回公開された調査結果では、消費者のニーズと企業の技術導入のギャップが浮き彫りになりました。小売業界は、それぞれの課題を克服し、顧客体験を向上させるための新たな戦略を模索する必要があります。配送テクノロジーなどについての調査結果を含むレポート全文は、KPMGの公式サイトを通じてダウンロードが可能です。