
サイカルトラスト株式会社(東京都渋谷区)は、AIが商品の選定から決済までを代行する「エージェンティックコマース」に、デジタルプロダクトパスポート(DPP)を組み合わせ、決済ごとに真正性を自らAIが照合する「エージェンティック・サプライチェーン・コマース」に関する新たな国内特許を取得したと発表しました。
来歴を確認せず支払いが確定する課題
現在広がりつつあるエージェンティックコマースは、AIが商品情報と取引条件が合致したという表面的な事実だけで支払いを確定させる仕組みです。商品がどこで作られ、誰の手を経てきたかという「来歴」は確認されず、模造品が正規品として流通するリスクが残っていました。国内では43社が参加するトークン化預金の銀行間即時決済の実証実験も始まっており、決済の速度と正確性の両立が課題となっています。
DPPと決済履歴を掛け合わせて照合
欧州では2027年2月からEV用電池などにDPPの表示が義務化され、対象はアパレルや家電、家具など幅広い分野に広がる予定です。今回権利化された技術は、DPPに記録された商品の来歴と、オンチェーン決済で残る「上流から下流における決済履歴」を照合し、両者が一致した場合のみ本物と判定して支払いを確定させる仕組みです。AIが取引ごとにリスクを見立て、低リスクな取引は速やかに処理し、高リスクな取引は深く調べるなど、照合の深さを自動で振り分けます。
機密情報を守りながら真正性を証明
どの手順で照合し、どのように判定したかは監査記録として残るため、後から不正が判明した場合にもAIの誤判定か担当者の操作かを追跡できます。さらに、仕入先や原価といった機密情報を取引相手に開示することなく「本物であること」だけを証明できる暗号技術(ゼロ知識証明)も採用しました。同社の須江剛代表取締役は、決済の速さを保ったまま確かな照合を実現することで、中小の製造業者でも見知らぬ海外企業と直接取引しやすくなると述べています。
同社は40件超の国内外特許・出願を持ち、サプライチェーンの真正性に関する国際標準規格「ISO 26345」の策定にも提案・原案作成の立場で参加しています。今後も特許群の分割出願を継続し、技術の進化に応じて権利範囲を更新していく方針です。

