円安倒産が急増し、すでに前年超え 7割以上が卸売・小売業

株式会社帝国データバンクは、2023年8月31日までに発生した「円安倒産」の発生状況について調査を行い、分析した結果を発表しました。

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円安倒産が急増し、すでに前年超え 7割以上が卸売・小売業
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株式会社帝国データバンクは、2023年8月31日までに発生した「円安倒産」の発生状況について調査を行い、分析した結果を発表しました。集計の対象は、負債1000万円以上で法的整理による倒産に至ったケースです。

「円安倒産」とは、円安による輸入コスト上昇等が直接・間接の要因となって倒産したケースを指します。今回の調査によると、「円安倒産」は、2023年8月に7件発生していました。

2023年8月31日までに発生した「円安倒産」は47件に上り、前年の34件をすでに上回っています。現在のペースが続けば、2023年の年間倒産件数は70件台に到達し、2016年(98件)以来7年ぶりの水準に近づく見込みです。

業種別のデータを見ると、「卸売業」が24件で最も多く、全体の半数以上を占めました。次いで「小売業」が12件と続き、「卸売業」と合わせると全体の約77%となっています。

特に、繊維原料や衣料製品を輸入に依存する「繊維・アパレル関連(製造・卸・小売)」が16件と目立ちます。コロナ禍で売り上げが落ち込んでいるところに、円安による輸入コスト増が追い打ちをかけ、事業継続を断念するケースが見られました。

円安には輸出企業の売上増加やインバウンドなどの消費押し上げといったメリットもある一方で、輸入価格上昇による物価高騰が長引くと、マイナス面が顕在化していきます。企業経営に対して、円安による原材料およびエネルギー価格の高騰が及ぼす影響は、日増しに大きくなっています。

9月5日の東京外国為替市場では、一時1ドル=147円台に値下がりし、2022年11月以来10ヶ月ぶりの水準まで円安ドル高が進みました。欧米との金利格差が縮まらないことを受け、米ゴールドマン・サックスなどが円の対ドル相場予想を円安・ドル高方向に修正するなど、円安基調が今後も継続すると見られています。

16週連続でガソリン価格が値上がりしており、10月には大手電力10社が電気料金を値上げする予定です。帝国データバンクは、エネルギーコスト増加は、ポストコロナで本業を十分に立て直せていない中小・零細企業の経営に追い打ちをかけることを指摘し、今後「円安倒産」がさらに増加する可能性があると予想しています。

《Commerce Innovation編集部》

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