2015/08/17
ネットショップの物流倉庫選びで押さえておくべきこと

ネットショップをやる際に非常に重要な要素の一つが物流業務である。顧客から見ればワンクリックで商品が届くのだが、その裏側は非常に奥が深い。まずはメーカーや工場に商品を発注し、商品が届いたら入庫作業をして所定の場所に格納、顧客から注文が入ったタイミングで商品をピッキングし梱包&配送するのだが、仕組みがしっかりしてないとこの間にミスが多発し、顧客満足度を大きく落とす可能性がある。
通販物流の発送を外注したほうがいい理由
通販物流で一般的なのが、3PL(third party logistics)という方式で、最も効率的な物流の仕組みの企画・構築を行う業者に物流機能をまるごと外注するパターンである。自社で物流を構築するパターンもあるが、それなりにノウハウも必要であるし、季節要因による配送件数の増減等に耐えられなくなるケースもある。また、ネットショップはこなさなければいけない業務が非常に多いので、時間を捻出するためにも物流業務は極力外に出すことをお勧めする。それでは、入庫作業→在庫保管・管理作業→ピッキング作業→梱包作業→配送作業→報告業務(入荷報告、在庫報告、出荷報告)というブロックにわけて、各業務を説明していく。
商品管理方法について
倉庫作業の肝は商品を“間違いなく”入庫することである。JAN(Japanese Article Number)コードという日本の共通商品コードがすべての商品についている型番商品であれば、バーコードリーダーでJANを読み取りユニーク管理できるから問題ないだろう。ただ、雑貨やファッション、輸入商品になると、JANコードが付与されていないケースも多いし、競合との差別化でマイナーな商品を扱っているショップであればほとんどの商品にJANがないこともある。この対策として、自社内で発行したハウスコードを商品に貼って管理する方法がり、現在では多くの通販物流倉庫がハウスコード運用をしている。
1つ悩みどころは、商品をあくまで借りて販売する委託販売モデルの場合だ。借り物なので汚すわけにはいかず、シールを張ることは難しい。この場合、商品をピース単位ではなく箱単位で管理し、その箱にバーコードを貼るやり方をとるしかないが、1箱1商品管理とした場合、どうしても一箱複数商品入れられる保管形態と比べると保管効率が悪い。であれば、はがれやすいシールを使って、1ピースずつの商品管理をする方式がベターだろう。
JANコードを使えない場合は、本当にオーダーした商品がメーカーから入庫されたのかどうかを確認するには、写真や、商品名で属人的に判断するしかなくない。納品メーカーに協力を仰ぎ、納品書をしっかりいれてもらう、区別がつきにくい商品はしっかりポストイットなどで目印をつけてもらうなどしてもらうのが重要だ。また、倉庫を選ぶタイミングで、JANなし管理を倉庫が実績として持っているかをヒアリングして欲しい。(対応できない倉庫も存在する)
入庫作業と検品
入庫作業をする際にキーとなってくるのが、検品をどこまでやるかである。1入庫あたりの単価はさまざまだが相場は、ざっくりJANのバーコードを付与するので10円~30円程度、数を数えるという意味での入庫作業で15円~30円程度が相場だが、検品をしっかりやるとなると50円にも100円にも値段は上がっていく。品質の安定した商品であれば全てを検品(全数検品)する必要はないので、1箱で1個だけ検品を行うような部分検品でよいだろう。例外として、発展途上国からの直輸入品などであれば、最初のうちは全数検品が必要かもしれない。
<一般的な検品項目事例>
・パッケージがつぶれていない
・賞味期限が条件範囲内
・中身の商品が異なるものではない
・中身の商品が壊れていない
etc
在庫管理コストの考え方
在庫保管・管理業務のポイントは坪単価と保管効率である。坪単価は、1坪あたりの賃料であり、地域によって大きく変わる。個人住宅と同じ考え方で、土地の値段と上物の価格が基準となる。坪単価が下がるケースの代表例としては、その倉庫会社が不動産として倉庫を保有していて減価償却が終わっている場合、本来1F部分となるスペースに中2階を作って面積を倍にしている場合などがある。
また、坪単価の相場だが、都心の倉庫地帯で例をあげると、神奈川・千葉なら坪単価4000~6000円程度、静岡は坪単価3500円~5000円、栃木は坪単価2500円~4000円ぐらいになると思う。安ければいいという問題ではなく、都心から離れると宅配便の送料がアップする傾向があるので、ここは総合的にコストシュミレーションをして判断したほうがよい。
保管効率は倉庫業者によってレベル差が大きいが、倉庫見学をすれば一目でわかる部分である。棚を使うのは当たり前だが、その棚に様々な大きさの引き出しを格納し、サイズ別に管理することや、あまり動かない在庫はバックエンドに圧縮して収納するなど工夫がなされているかどうかに注目いただきたい。
出庫作業
入庫が間違いなくできていれば、出庫時に改めて商品の確認をする必要はない。その商品が置いてあるロケーションまで倉庫の作業員が向かい、商品をピックし、梱包スペースまで持っていく。そこでラッピング作業や同梱作業などをして、段ボールにまとめて入れて、緩衝剤を詰めたら完成だ。緩衝材はビニールに空気の入ったエアピローを使うか、コストを抑えるなら紙をちぎって使うのでも十分である。 出庫作業の相場感だが、値段の設定方法がまちまちだ。大抵の場合、1出荷あたり70円~150円の基本料に加え、1ピックあたり10円~30円くらいのイメージである。例えば、同梱率が2.5個であれば、基本料100円+ピック料20円×2.5個=1出荷あたり150円のコスト計算になる。
ラッピング作業
もし、ギフトをメインで扱うネットショップであれば、ラッピングは細かくに見ておきたい。ラッピングが得意な倉庫は少ないのでその分コストが上がりがちだが、苦手なところにお願いする場合は作業員にラッピングの講習を受けてもらうという手もある。
返品作業
返品コストは大切だ。基本的には出庫作業と同じ金額になるが、それ以上になってしまう場合は交渉したほうがよい。ECをやる限り、売れない商品というのは必ず出てくるので、それらを滞留しないためにもコストは極力抑えたい。また、JANのバーコードを貼る場合は、返品のことも考えて剥がしやすい素材にする必要がある。
配送会社と費用
配送は佐川急便やヤマト運輸の仕事だが、倉庫によって契約形態や料金が変わってくるので注意したい。例えば、配送会社と同じ建物に入っている倉庫であれば、配送会社からの集荷コストがかからないので単価が下がったり、倉庫自体の物量が多ければその分ディスカウントされていたり、一方でBtoB中心の倉庫だと大き目の段ボールが取引の主力サイズとなり、toCでよく使われる小さいサイズの料金が高かったりなんてこともある。倉庫会社で比べても1配送で100円以上の差があるので、非常に重要なポイントだ。
WMS(倉庫管理システム)はASPだと断然安い
次に、EC物流倉庫には必ず必要となるWMS(倉庫管理システム)について。WMSとは、在庫の把握や作業内容の確認を行うシステムで、入出庫をするハンディと連携している。ヒューマンエラーを減らしてくれるし、非常に効率的に業務をまわすこともできるようになる。物流倉庫業者が自社で開発していることも多いが、その場合は倉庫利用企業1社あたりのコストが非常に高くなるケースがある。しかし、近年ASPサービスが伸びてきていて、コストダウンの方向に向かっている。おすすめなのは、「ロジザードゼロ」で、あらゆる物流要件に耐えられるような汎用性を備えている。
物流倉庫、選び方のコツ
ECは高コスト体質なので、コストをきちんと抑え、その部分で新たな投資を続けていくことが他社との差別化となり、成長角度が決まっていく。ただし、倉庫については最低でもここまではクオリティを保ちたいという基準が必要で、いくら安くても、ミスが多いと、カスタマーサポートコストが膨れ上がり、ユーザーの信頼を失い売上減少といった結果を招くことが多い。
また、自社のスケールに合った倉庫を選ぶのも重要である。小規模EC向けの倉庫に、大規模ECが入ると入出荷をさばけなくなるし、逆に大規模EC向けの倉庫に小規模ECが入ると、固定費用が高く、経営が苦しくなるケースも聞く。初期投資も同様で、規模が小さいのに物流に求めるレベルを極端に上げてウン千万も開発投資してしまえばすぐにキャッシュがまわらないくなるだろう。
物流倉庫を見つけるにはいくつか方法があるが、まずは、情報収集もかねて、知り合いのEC事業者に紹介してもらうのも有益だ。また、ECサポーターでは物流倉庫の選び方サポート、紹介を行っているので問い合わせいただけると幸いだ。