2015/12/26

EC業界が猛反対していた広告規制は結局見送り

EC業界が猛反対していた広告規制は結局見送り

 特定商取引法や消費者契約法の改正をめぐり、「広告を勧誘とみなして規制を強化すべきか」という論点が内閣府・消費者委員会で議論されていましたが、消費者団体らと経済界の激しい議論の末、来年予定されている法改正においては法制化が見送られる見通しとなりました。ネット広告が事実上、運用できなくなるような広告規制が回避されたことは業界にとって朗報です。

「広告は勧誘か」を議論

 消費者委員会が14年秋から検討してきた広告規制の内容は、ざっくり言うと、「誇大広告や虚偽広告などを見て商品を購入した消費者に、解約や返品を認めるようにする」というものです。現行法では、不当広告に関する解約権は存在しないため、万一これが認められれば、広告規制の大転換になるところでした。

 消費者団体などは、広告を勧誘行為と位置付け、勧誘行為に課されている厳しい規制を広告にも適用すべきだ主張していました。広告技術の進化により、リターゲティング広告のような消費者の購買意欲を喚起し、購入意思に直接的に働きかける広告は勧誘行為の側面が強いということなどが論拠です。そして、広告を勧誘行為と規定するため、消費者契約法や特定商取引法を改正すべきだと主張しました。

景表法は解約や返品を認めず

 広告表示への規制は現在、景品表示法によって規定されています。商品やサービスついて実際よりも優れていると偽って宣伝したり(優良誤認)、商品やサービスが相場よりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝したりすること(有利誤認)を禁じています。違反した事業者には消費者庁や都道府県が「措置命令」を命じ、違反事業者の社名を公表するほか、16年からは違法に稼いだ売り上げの3%を課徴金として徴収する制度も始まる見通しです。ただ、不当広告を見て商品を購入した消費者に、一律に返品を認める規定はありません。

 一方、勧誘行為に対しては、特定商取引法によって、さまざまな規制が設けられています。例えば、不実を告げてはいけないというのはもちろんですが、消費者にとって重要な事項を説明しなかった場合(不利益事実の不告知)も違法となります。仮に広告が勧誘行為と見なされれば、消費者にとって不利益となる情報をすべて広告に記載する必要性がでてきます。

「広告=勧誘」は無理筋

 広告が勧誘行為とみなされた場合、消費者にとって重要な事項や、消費者にとって不利益となる情報を記載しなくてはなりません。しかし、商品やサービスに関する、ありとあらゆるデメリットを広告の限られたスペースに記載するのは非現実的です。また、「消費者にとって重要な事項」とは何を指すのかも曖昧です。通販会社が最善を尽くしても、消費者が「自分にとって重要な事項が広告には記載されていなかった」と主張し、契約の取り消しを求めてくるような事態も十分に想定されます。こうした理由から、広告を勧誘行為と見なすことに対して、日本通信販売協会や、楽天が率いる新経済連盟、ECネットワーク、広告の業界団体などが猛反対していました。

 結果的に、広告を勧誘行為と規定する根拠となる立法事実が明確に示されなかったことから、法制化は見送られる見通しです。議論を終えてみれば結局、「広告をただちに勧誘とみなすのは無理筋」という常識的な結論で決着したといえるでしょう。

火種はくすぶり続ける

 消費者委員会は、広告を勧誘とみなすか否かの議論は、継続的な検討課題であると位置付けているため、今後もこの問題の火種はくすぶり続けるでしょう。広告への規制強化を避けるために、EC業界は事業者団体を中心に結束して反対意見を主張していくとともに、広告表示の適正化のための自主的な取り組みを続けていくことも必要でしょう。

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