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2015/11/17

ヤマト運輸が怒りの意見広告、日本郵便への優遇措置を批判

ヤマト運輸が怒りの意見広告、日本郵便への優遇措置を批判

 日本郵便への税制上の優遇措置などが宅配業界における公平な競争環境を阻害しているとして、ヤマト運輸が11月12日に全国54の新聞に意見広告を掲載しました。ヤマト運輸はこれまでにも、旧日本郵政公社への優遇措置を批判する意見広告を掲載したほか、宅配業に必要な「路線免許」の交付を渋っていた旧運輸省に対し行政訴訟を起こして免許の取得を勝ち取るなど、“国とも臆せず戦う企業”として知られています。

ヤマトの意見広告http://www.kuronekoyamato.co.jp/ad/20151112/index.html 

日本郵便への優遇措置とは?

 今回、ヤマト運輸が不公平だと主張している日本郵便への優遇措置とはどのようなものでしょうか。

 日本郵便が手掛けている郵便業務は、電気や水道などと同じく、社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービスである「ユニバーサルサービス」と位置付けられています。日本郵便は郵便業務を、あまねく日本全国に公平に提供する義務を負っており、全国に18万本以上の郵便ポストを置き、過疎地も含めた全ての市区町村で約2万4000カ所の郵便局を運営しています。

 日本郵便は不採算地域であっても郵便業務を継続することが義務付けられている一方で、その損失を補填するために事業所税の免税や固定資産税の減税など、さまざまな優遇措置も受けています。税制優遇のほかにも、郵便物の集配車両は駐車禁止の場所でも駐車できたり、国際郵便における通関手続きが簡素化されていたりするなど、多くの優遇措置の恩恵を受けています。

 ヤマト運輸は意見広告の中で「ユニバーサルサービス」の必要性は認めています。しかし、税制上の優遇措置は郵便業務のみを対象とすべきなのに、日本郵便が手掛けている宅配業務など「荷物を運ぶ業務」にまで優遇範囲が拡大していることを、今回の意見広告で批判しました。ネットオークションの配送などにも使われる「スマートレター」や「レターパック」など、実際には「荷物を運ぶ業務」についても事業所税の免税などが適用されていると指摘しています。

 また、日本郵便の郵便事業は2015年3月期決算で123億円の営業黒字でした。他の事業を含めた日本郵便全体の営業損益も107億円の黒字です。ヤマト運輸は、「ユニバーサルサービス」を維持するために必要最小限の優遇措置は許容するが、十分な利益が出ている日本郵便に対し、国民の血税を投じて税制上の優遇を継続していることに問題提起しています。 

くすぶり続ける“信書問題”

 ヤマト運輸が意見広告を出したもう一つの理由は、手紙などの「信書」の配達が法律により日本郵便の独占業務になっていることです。例えば、ヤマト運輸の「宅急便」などで信書を送った場合、ヤマト運輸と発送者は罰せられます。罰則規定は3年以下の懲役、または300万円以下の罰金となっており、けっして軽くはない。にもかかわらず、信書の定義は非常にわかりにくく、わずかな文面の違いや送付する状況によって、発送者が無自覚のまま法律違反を犯す可能性があることは、以前から広く指摘されてきました。ヤマト運輸は配送事業者や発送者が意図せず法律違反を犯すことを防ぐため、今年3月末に「クロネコメール便」を廃止しています。

 信書の配達事業に民間事業者が参入することは可能です。しかし、全国に約10万本のポストを新規に設置する必要があるなど参入障壁は極めて高く、参入している民間企業は1社もありません。ヤマト運輸は、既存の郵便ポストや郵便局ネットワークを民間事業者が利用できるようにすることで、「ユニバーサルサービス」の民間開放を進めることが消費者の利益につながると主張しています。

 ヤマト運輸はこれまで、郵政事業の「ユニバーサルサービス」の在り方を議論していた総務省の情報通信審議会郵政政策部会において、意見広告と同様の主張を繰り返してきました。しかし、同部会が9月にまとめた答申ではヤマト運輸の主張が全く認められなかったことから、ヤマト運輸は意見広告の掲載に踏み切ったとみられます。

 ヤマト運輸の意見広告が日本郵便への優遇措置の在り方にどの程度影響するかはわかりませんが、EC業界に関わる記者として、宅配業務における公平な競争環境が実現することで、宅配の品質向上や送料の抑制などにつながって欲しいと思います。

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